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第三章 ​時空を超えて②

1月10日 午後1時 帝都ホテル(東京)

浩一郎はホテルの1室で石田の到着を待っていた。1時間ほど待っただろうか・・・。部屋のベルが鳴った。

「浩一郎君!待たせたね!ちょっと手間取ってしまって!ごめん!」と石田。大きなキャリーバッグ2個を

持ってきた。「こんなに?」と浩一郎。「ああそうなんだよバラの使用済みの万札だからかさばってしまって!

後で宝石も持ってくるから、とにかく浩一郎君は百万ずつ束に輪ゴムでくくる作業始めてくれる?」

と石田。「あっ!ええ・・・承知しました。」と浩一郎。そして浩一郎はバッグを開ける。

そこには無造作に詰め込まれた1万円札が・・・ギッシリ!早速、浩一郎は「ていねい」に

 百万ずつの束を作っていく。「浩一郎くん!急いでやらないと日が暮れるよ!第一国税さんが

1円単位までしっかり勘定するからアバウトでOKだよ!」と石田。「ああ・・・そうなんですね・・・」と浩一郎。

「そう言えばお父さんのリハビリ!何でも超一流の理学療法士と作業療法士らしいね!」と石田。

「ええまあ。何でも彼らはあの有名な京阪大学の山仲教授の研究室で再生細胞医療の研究をしていたらしく

 再生細胞医療の研究と脳外科医としても将来有望視されていたらしいんです」と浩一郎。

「そんな彼らがなぜ?理学療法士や作業療法士に?」と石田。「それが佐々木君の父親が脳出血で

   倒れて右麻痺言語障害が著しく残った状態で・・・今のリハビリではほとんど社会復帰出来ない現実を知り、

   自ら父親に付き添い理学療法士の資格やリハビリの研究を独自で行い、

  見事父親を社会復帰させたとか。そしてそれを知った親友の宮本君と一緒に

  リハビリの 世界に飛び込んだとか・・・」と浩一郎。「なるほど・・・」と石田。

「でも彼らへの報酬も高額で1年間で8,888万円。 2年目でも7,777万円と破格なんです

 それでも予約が殺到してて・・でも彼らが偉いのはその収入のほとんどを将来の医療の研究に寄付してる

  らしく人間的にも素晴らしいんです。うちの父親とは大違いですよね・・・」とため息まじりに浩一郎。

「まあまあお父さんも家族のために一生懸命働いてるんだから・・・おじさんだってお父さんに、

助けてもらったし、お父さんが助けてくれなかったら一家心中しようかと思った時もあったんだから・・・

だからお父さんの事を卑下する事は止めて欲しい・・・」と石田。「もちろん頭の中では理解は出来てますよ。

良いところもたくさんあって誰とでも親しく出来てお人好しで騙される事も・・家族が振り回されても

また、「中の上の生活」に戻ってる。不思議な才能?がありますよね・・・」と浩一郎。

「そうだよ。お父さんにしかない魅力がたくさんあるから今回の件は色んな意味で厄落とし?」と石田。

「そうですね!あゆちゃんを見習って前向きに考えることにします!」と浩一郎。

「そうだよ!元気丸のあゆみちゃんを見習って!」と石田は言い残して宝石を取りに部屋を出て行った。

残された浩一郎は適当で良いと言われてもキッチリ百万円ずつ束を作っていく。全部で91束と55万円ということは

9,155万円。それと宝石が国税に・・・。今回は金塊40㎏だから残りは2億円近くある。

石田さんに1億そして残り1億はほぼ父親の医療費と佐々木君と宮本君の報酬で消える。

とブツブツ浩一郎は独り言を言いながらとりあえず、あゆみの指示通りに浩一郎は動くことにしている。

早く終わらせたい!浩一郎の頭の中は早く抜け出したい気持ちでいっぱいだった。

そんな時、石田社長から浩一郎に電話が「申し訳ない!思った様な見栄えのする宝石が手に入らなくて

明日の午前中まで待って欲しいんだけど・・・ごめんね!」と言葉とは裏腹に愛想無くブツリと電話が切れた。

仕方なく浩一郎はフライトをキャンセル。延泊を余儀なくされた。

1月10日 夜10時あゆみの部屋

あゆみはいつものようにアノヨンを待っていた。なかなか現れない。そんな中あゆみは佐々木の事をなんとなく

ではあったがボーっと考えていた・・・。私の父の救世主。ハンサムで知的で輝くオーラ!全てに非の打ち所

がない佐々木。でも恋とは何か違うあゆみの中に新たな志が芽生え始めていたのであった・・・。

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