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第三章 ​時空を超えて①

正月、三が日も明け、いよいよ浩吉のリハビリも始まった!高級ホテル並みの病院の個室。

病院に1,000万円のデポジットをした。これもあゆみに告げられたアノヨンの指示によるものである。

すると保険内のリハビリメニューから保険外の最高の個別リハビリメニューに変わった。

地獄の沙汰も金次第なのか。

とにかくリハビリは時間との勝負である。早い段階からしっかりと付きっきりのリハビリ・・・。

朝食後から早速声出しの訓練、そして鉛筆を持つ訓練と、食事・オムツ交換・清拭以外は、

ほとんどの時間リハビリに費やし更には薬も最高の薬を処方してもらっていた。

 

一方、浩一郎は早速東京帝都ホテルを予約!金塊40㎏を持ち石田社長に手渡していた。

「この度は豊臣家の件で大変お世話になります」と浩一郎。すると石田社長は

「段取りはお互い打ち合わせしてあったから心配いらないよ。それより浩吉さんの容態はいかがですか?」と

「まあ・・・妹のあゆみが絶対社会復帰させると意気込んでましたが・・・先のことはまだなんとも・・・

それよりなぜこの時期に父が国税に?」と浩一郎。

 

「うーんあくまでも予測に過ぎないけど・・・お父さんがかわいがっている蜂須賀美咲さんは知ってると

思うけど・・・実は浩吉さんは美咲さんの双子の姉美紀さんを最初はかわいがっていたんだけど・・・

まぁ~色々あってね・・・浩吉さんは妹の美咲さんを影で応援する様に・・美咲さんは今や宝石デザイナーの

女帝とまで呼ばれ、片や美紀さんは衰退の一途。その妬みから国税に告発したんじゃないかな・・・

じゃないと絶対的秘密裏に行われてる浩吉さんの裏取引の事など知る由もないんじゃないかな・・・

まあどんな会社も叩けばホコリが出るだろうけどね・・・とにかく対策は早急にしないと!」と石田。

「そんなことが・・・女はいつの世も怖い怖い・・・」と浩一郎。

「で、この金塊40キロ、いつぐらいまでに・・・換金出来そうですか?」。

「もう手配は終わっているから10日までには用意出来ると思うよ!とにかく国税用を先にしないとね・・・

  浩一郎君今日はどうするの?」と石田。

「すぐに飯塚にとんぼ返りします!残りの金塊を運ばないと・・・」と浩一郎

浩一郎は父に対して反感を抱いていた。なぜなら会う度に“バブル期みたいな豪遊にどんぶり勘定は止めて”と

再三にわたり言ってたが・・・こんな事に。そして浩一郎は大きなため息をついたのである。

 考えても、考えても納得のいく事ではなかったが豊臣家の運命だと諦めるしかなかった。

 浩一郎は石田と別れ告げ予約のフライトに間に合うように急ぎタクシーに乗り込んだ。

 

1月4日夜10時あゆみの部屋

「これから私は本当どうなっていくんだろう・・・パパは本当に社会復帰出来るだろうか?」とあゆみは

ベッドで独り言を言っていた・・・。毎日寝入りばなになると決まってアノヨンの指示がある。

あゆみはもはやアノヨンの指示無しでは先に進めない様な、そんな気持ちに陥っていた。

そして今日も「あゆみはん!」と例の関西なまりのアノヨンが・・・。

「今日は現金が届いてからの話するで・・・1億より少し多めの使い古しの現金を金庫に.

見栄えのする宝石は裸石(加工前の石だけの状態の物)と指輪とネックレス

それぞれ専用のケースに入れ金庫内に納めいつでも対応出来るようにするんや」とアノヨン。

「私はとにかく今はアノヨンの言うとおりに・・・信用するしかない・・・いいや信用する!」とあゆみ。

「そうや!信用してくれへんのやったら、わてかて苦労の甲斐がないからな。宿命はなかなか変えれへんが

運命は変えられるんや!必ずこの危機をみんなで乗り越えるんや!」とアノヨン。そして

「また明日来るさかい・・・体調くずさんようにな~」と、そして、いつものように気配が無くなっていった。

 

1月5日 朝9時 筑豊大学病院

 今日は浩吉のお見舞いを兼ねてリハビリの様子を見学に。

特別待遇の浩吉の入院生活は面会制限も無く特に家族は24時間いつでも

面会が可能だった。部屋ではアロマセラピー(アロマを使った治療)もあり香りも最高。

至れり尽くせりの最高の治療、最高のリハビリを受けていた。隣接の個室病室も借りており個別

リハビリや家族が泊まれるように整備されていた。

          

「パパ!体調はどう?」とあゆみ。「うんうん」と何と浩吉。表情に笑顔らしきものまで。

左手は挙がるようになっていた。

「すごいじゃないパパ!頑張ってる成果がすぐに出てるガンバレ!ガンバレ!パパ!」

とあゆみ。続いて美智子が「家族愛はきっとパパを復活させるわよ!頑張って!」

そしてともみが「よかよか~そん調子でがんばらんね~」と。みんな笑顔になっていた。

あゆみが「こんなに早く希望の光が見えてくるなんて、いったいどんな人が担当なんだろうね・・・」

 

しばらくして、ドアをノックして二人の若者が入ってきた。「豊臣様担当の理学療法士佐々木小四郎です」

「同じく作業療法士の宮本武です」二人ともイケメンである。あゆみも美智子もそしてともみまでが

しばらくぼう~と魅入っていた。ともみが「二人ともよか男やんね~私の腰も治してほしかね~」

小さな端正のとれた顔立ちに鍛えられた身体。浩吉の若い時とは比べものにならないイケメンである。

すると「私達は日本で最高の理学療法士と作業療法士だと自負しております。正直我々は金額も高いですが

確実にリハビリいわゆる社会復帰させるために全身全霊で取り組んで参ります」と佐々木。

 

「やったねパパ!これで安心ね!佐々木さん!宮本さん!パパのことお願いします」

この二人(理学療法士佐々木と作業療法士の宮本は常に

ペアで行動し住まいは転々とホテル住まい)

医療業界や介護業界では若くしてレジェンド的に有名なのである。

中でも脳卒中患者のリハビリ(社会復帰)は到底無理だとさじを投げられた患者を

次々と社会復帰させてきたのだ。正に神がかり的な最高のリハビリ技術を持っていた。

当然、最高の技術は金額も破格であるが、彼らは社会復帰を希望する患者からの予約が年間契約で入っている。

 

彼らのリハビリ治療は二年を要し、予約を取るのが難しい。

筑豊大学病院側もダメもとで連絡をして予約が取れたことに正直驚いていた。

不思議なことに二年契約の患者が一年で社会復帰して予約が切れたばかりだった。

これはアノヨンの力でもあった・・・。

大阪で生まれてくる事無く、アノヨンとして存在し!ずっと目に見えないところで

支え続けてきたのであるが。今回の浩吉が倒れるような、宿命はアノヨンでも変えれない・・・。

出来る事にも限界がある。

しかしながら、豊臣家にとって、もはやアノヨンの存在無くして道が開けない・・

そしてその秘密を知る唯一のあゆみの闘いはまだ幕を開けたばかりだった。

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