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第五章 ​絆 ①

梅雨も明け清々しい季節そしてあゆみの好きな夏が駆け足で迫っていた・・・

「ママ~気晴らしにみんなで小旅行計画しない?」とあゆみ。

「ママも行きたいけど・・・パパはどうするのよ?」と美智子。

「それが武田さんの後輩が障がい者の外出サポートされてるみたいで・・・

車いすで、どこだって行けるらしいの!一度相談しても良い?ねえママいいでしょう?」とあゆみ。

「いいけど・・・ホントにそんなことできるの?」と美智子。「じゃ!善は急げ!さっそく今からパパのところに行くわ!

今日は武田さんの日だから」と玄関を飛び出して行った。そして浩吉の病室に着くなり「あっ武田さ~ん。先日言ってた

障がい者の外出サポートされてる方えーとあの・・・」とあゆみ。「ああ~後輩の山本看助のこと?」と武田。

「そうそう山本さん!私達も利用できますか?」とあゆみ。「もちろん出来ると思うよ。車いす対応だから・・・」と武田

「お金がかかっても今!行きたいの!もちろんドクターPOSTには同行してもらうわよ~それで全て解決ね?」とあゆみ。

「今日、後で電話して詳しい事聞いておくね・・・僕も実際問い合わせするのは初めてだし・・・期待に添えるかどうか

山本は行動力あるけど、昔からおっちょこちょいな面があって、とにかく電話してみよう・・・」と少し不安気味な武田。

  「決まったらパパどこにする?私パパといきたいとこあるの~花の井ホテル!

   大阪から戻って初めて行った別府の温泉!温水プールに展望風呂・・・そしてブュッフェ!

 食いしん坊の私には最高!」とあゆみは少し暴走気味なコメント。

  「まあまあ~あゆちゃんそんなに慌てなくてもパパが完全に治ってからでも・・・」と浩吉。

 「今でしょ!みんなパパのために頑張ってくれてるの!笑顔で接しているけどストレスはあると

思うわよパパ!ママもきっと不安でいっぱいよ。みんなの絆を高めるためにも今行かなきぁ!ねっパパ!」とあゆみ。

「あゆちゃんはみんなを気遣っているんだね。パパはうれしいよ・・・」と例によって涙ぐむ・・・。

それを見て武田はすぐに山本に電話をかける。「おお!カンスケ!久しぶり!仕事を頼みたいのだが・・・」と武田。

「先輩お久しぶりです!仕事?長いお付き合いで初!遂に私の良さに気づきましたね~先輩~」と山本。

「とにかく急ぎで頼みたい!いつだったら来れる?」と武田。「ずいぶん急ですね!ひょっとして

余命宣告された方?」と山本。「じぁ無いよ!」と武田。「そうですか・・・来週の火曜日には行けそうです。」と山本。

「頼んだよ!患者様の様子や同行するご家族そしてオプションなどわかる範囲でメールする!じぁ頼んだよ!」と

簡潔に依頼を終えた。「先輩~アノ・・・○×○×○×○×」と山本が話していたが長くなりそうだったので

武田は電話を切ってしまった。武田は電話が苦手!更に山本も武田の少しチャラいところが苦手だった。

「ちょっと軽いけど山本は仕事はキッチリしますから心配なく・・・」と浩吉に伝えた。

「またおもしろいことされてる方と知り合いになれるね!パパ!豊臣家は先祖に守られてる気がするわ~ねっパパ!」

とあゆみ。「そうだね、そうだね・・・あゆちゃん」と未だに浩吉の涙腺が解放されていた。そんな中美智子が

買い物の帰りに浩吉を見舞いに来た。「パパ~また泣いてるの?」ちょっとあきれた顔で尋ねると。

「あゆちゃんが今度みんなで旅行に行く計画を提案してくれたんだ!」と浩吉。

「それで・・・涙が?」と美智子。「パパはあゆの思いやりが嬉しかったのよねっパパ!」とあゆみ。

「そう!それ!」と浩吉。「そうなのね。めでたし、めでたし!でどこ行くの?月野リゾート?」と美智子。

「別府の花の井ホテル!ねぇママどう思う?大阪から戻ってほら初めての温泉!懐かしくない?ねっママ!」とあゆみ。

「う~んそうね・・・確かに思い出の・・・でもね海外の方と若者が多いし・・・ビッフェだし・・・」と美智子。

「ママ!あの頃思い出して!確かに月野リゾートは落ち着いた雰囲気で食事も贅沢!でもね、ママ、豊臣家はまた

イチから出直すのよ!私は幼い頃の思い出の場所に行きたいの!ママ!」とあゆみ。「そうね・・・あゆにとっても私に

とってもパパにとっても思い出の場所よね・・・第一に月野リゾートより大幅に安い!魅力的!」と美智子。

「美智子!いい話が台無しじゃないか!」と浩吉が最近一番の滑舌で訴えた。

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