
第一章 裕福な家庭③
盆休み相変わらず暑い日が続く。快晴。今日は吉野ヶ里町の実家に帰省し、久留米のお寺にお墓参り。
浩吉の母スーパーばーちゃんに会える。朝10時過ぎに礼服に着替えて浩吉・美智子・あゆみが飯塚を出発。
早速あゆみが「パパ!今日は松富にいくんでしょ!」お墓参りの時は必ずお寺からほど近い鰻屋に行く
事にしている。「母さんに聞いて見ないと・・・うなぎはもう重いかも・・・年が年だから・・・」と浩吉
あゆみが「パパ!おばあちゃんに年の事言ったら、また言われるよ”わたしゃまだ若いもんには負けん”って」
「そうやった、そうやった一応軽く聞いてみよう・・・」と浩吉。
すると美智子が「聞かなくてもあゆみが行きたい所に決まってるでしょう」
「そうよ!そうよ!おばあちゃん何でもあゆみの言うこと聞いてくれるんだから~」とドヤ顔のあゆみ。
「あゆみはいつも一言多い!」と厳しい口調で美智子。
峠を超えてバイパスを抜け約50Kmの道のりを愛車のアウディは風を切って走る。やがて吉野ヶ里町の
田園風景そして吉野ヶ里遺跡公園。1時間半ほどで実家についた。
「あゆみちゃん暑い中よう来たね~早う家に入りんしゃい!美智子さんも
相変わらず、べっぴんしゃんで~浩吉なんばしょっと早う荷物ば入れんね!」
と浩吉の母、ともみが出迎える。仏壇に手を合わせ、お茶もそこそこに
お寺に出発した。30分ほどでお寺に着くはずだが「パパ~また道間違えた?
この道いつも遠回りって言ってるのに~!」とあゆみ。
浩吉が「パパはいつもゆったりした気持ちで運転してるし、道はつながってるから
良いの!良いの!」すると、ともみが「今度からばあちゃんが運転しょうかね!浩吉は何回言っても
同じ間違いばぁ繰り返すと!いい加減に覚えんね!」更に美智子が追い打ちをかける
「出会った頃”道はつながってるから~”なんて言ってたら行き止まりになって。最近はナビに
頼りっぱなしで、それでも間違えて、もう笑うしかないんですよ。おかあさん!」
「ごめんね~苦労ばかけて~」と、ともみ
浩吉が「まぁ~まぁ~人には得手不得手があるんだから、気にしない、気にしない!」
「気にせんね~そんなんやけん!苦労ば、かけろうが!」と、ともみ。
そのやり取りを見ていた、あゆみは余計な事を言ってしまったと後悔するのであった。
「着いた!着いた!さぁ!じいちゃんと、ご先祖様に手を合わそう~」
とあゆみ。大きな本堂で手を合わせお墓へ、盆と正月しか来ないが皆、何だかほっとする。
「さぁさぁ!お昼はおばあちゃん!”う・な・ぎ”でござんすよ~!」とあゆみ
すると「今日はばあちゃんが、ご馳走するから好きなだけ食べんしゃい!」10分程で鰻屋”松富”。
だが店に着くと、繁盛店だけあって大混雑!待ち時間が1時間半ほどらしい。
浩吉は待ってまで食事はしない主義である。だがここで”混んでるから他の店に行こう!”なんて言ったら
なんて言われるか分かっている。”美味しいから並ぶんじゃないの!”と絶対あゆみが言ってくる。
以前から必ず待たされるのは知っていた。浩吉はうなぎが嫌いな訳ではない
むしろ食べたいランキング上位に入る。松富のうなぎは美味しいしボリューム、コストパフォーマンスも申し分ない。
しかし浩吉がこの時期に、待ってまで食べたくない本当の理由は、7~8月の出張先のお昼はほとんどが
”うなぎ”なのである。得意先に「夏はやっぱり鰻を食べて精をつけないと!」と言って回ってるから
7・8月の出張先での鰻率8割を超える。ある時は一日に三回それぞれのお客様に、お昼を誘われ
「ちょうどお腹空いてたんですよ!うなぎ最高ですね~」を繰り返し・・・
鰻の匂いすら嗅ぎたくない状態に。だから出発前に母のせいにして鰻から免れたかったのである。
そんな事などつゆ知らず、みんな”せいろ蒸し!それとも、うな重!白焼きも良いわね!”と盛り上がる。
そんな中、浩吉はせめて冷たいビールだけでも飲めたら・・・でも運転あるし・・・何とか・・・
美智子は自分の車以外は運転しないし・・・とブツブツと独り言・・・と意外に早く順番が来た。
それだけでも、良かったと思いながらテーブルにつく。あゆみは「せいろ蒸しの特上と白焼きにビール!
それと鰻とキュウリの和え物パパもビール飲む?ママ運転してあげてよ~パパ疲れてるし」
さすが我が子よ!良いこと言う!頑張れそのまま一気にトライまで持ち込んでくれ~浩吉の心の声が聞こえてきた。
すると美智子が「パパの車は運転したくないわよ!」と一喝。すると浩吉が「ママ~今度の出張で
良い真珠のネックレスが入ってくるよ!ママいる?」と物でつる作戦にでた。しかしビールの為に
そこまでするのかと、呆れた母ともみが「飲みたいのなら飲みんしゃい!
ばーちゃんが運転してもよかよ!」と。「いや!いや!私が運転しますから。大丈夫です!」と渋々
美智子が運転する事に。浩吉はニンマリ。「さぁさぁ!みなさん何にしますか?」
結局、浩吉はビールと白焼き!ともみと、美智子はせいろ蒸しにした。
「ばーちゃんもビールば飲もうかね」それではみんな「かんぱ~い!」とあゆみのかけ声と共に食事が始まる。
浩吉はビールがすすむ1杯目をあっという間に飲み干すと2杯目3杯目と進んでゆく
相変わらず浩吉のヒゲにビールの泡がまとわりつく
「浩吉!いい加減にヒゲ剃らんね!うさんくさい」とともみ。
かまわずビールを吸い込んでいく浩吉。浩吉は、うなぎは進まずキュウリをまるでカッパの様に食べる。
何も知らない家族。浩吉は理由を言ってしまえば楽になるのだが・・・出張先で贅沢三昧!高級食材を飽きるほど
食べているとは言い出せないのである。皆笑顔!そしてあゆみの前に食べ残し・・・
あゆみは、お腹減っている時には大好きな、うなぎを何匹でも食べよう!と思うのだが
そんなに食べれる物ではない。美智子に「食べれる量を考えて注文しなさい!」
と何回言われても浩吉と同じ”蛙の子は蛙だ!”・・・うなぎを満喫し。そして一行は席を立つ。
「母さん俺が出すよ!たまの事だし」すると、
ともみが「ほんと~よかとね~年金の出たばかりやけん金はあるよ。雨が降るば~い!」あゆみ同様一言多い。
何と帰りに本当にすごい雨になった。次の日スーパーばーちゃんは自分で作った野菜やたくさんのお土産を持たせてくれた!
さぁ!いよいよ来週はあゆみの住まい探しに東京へ出発する!!