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​第一章 裕福な家庭②

あゆみがシャワーを浴びているとどうやら父親の浩吉が帰って来た様子。

「あゆちゃん~帰ったよ~お土産お土産~」するとバスタオルを巻いて髪を拭きながら玄関にあゆみが

「パパ!お帰りなさい!お疲れ様!いつもおみやげありがとう!みんな信玄餅楽しみにしてるわよ~」

まだ浩吉が何のお土産かいう前に、すかさず言ってきた。

後ろから美智子が「ほ・ほんとうにご近所の方も喜んで頂けるし」・・・

美智子はあゆみの変わり身の早さに・・・驚いた!

ほんの1時間程前にあゆみが美智子に言った信玄餅のくだり・・・

 “信玄餅は飽きた!もう要らない!”・・・

あゆみが我が子ながら末恐ろしく思えた。将来「政・治・家」にでも成れそうな気がした。

「そうか!そうか!今日はお得意様からも頂いた分もあるから!たくさんあるぞ~」と満面の笑みの浩吉。

「やったぁ!佐江内君の家にも持って行こう大家族だし、きっと喜ぶわ!一応確認だけど~私の大好きな

信玄餅よね?!」とあゆみ。

「もちろん!他にもぶどうとか桃とか持って帰るよう言われたけどやっぱり信玄餅だろう!」と浩吉。

「パパ~!もらえる物は何でももらわなアカンよ!」とあゆみは大阪弁で応える。

すると浩吉「今度から何でももらってくるさかい許してな~」と応えていた。

美智子はそのやりとりを見ながら微笑ましくも思えていた。

 

「さあパパも早う帰って来たし!三太郎寿司にでも行こかぁ」と美智子もつられて大阪なまりになっていた。

早速三人は真っ赤な美智子のクーパーに乗り込んで出かけた。浩吉はお酒を飲むつもりである。

飲まないときは最近、はまっている愛車アウディで

出かけるのだが(不当たり手形つかまされるまではずっとベンツだった)

今日は飲む!つもりだ。車を走らせ三太郎寿司に着いた。

相変わらずの人気ぶりだ。

ガラス張りの店内からは日本庭園が見え実に趣がある。

回転寿司ではあるがいわゆる浩吉がよく言う“中の上”のお店である。

そこそこのお値段がする。お酒の種類も豊富だ。「とりあえずビール!」と浩吉の言葉を待って

美智子、あゆみが注文する。二人ともうなぎ!鱧の作り!

それと忘れてはならないのが“泉州水なす”(わざわざ取り寄せてもらってる)

美智子は全く飲めないがあゆみ(17才)はこっそり飲むことにしている。

浩吉とあゆみは冷えたビール!美智子はお茶で乾杯!

浩吉はウニのお造りと中トロの造りを頼んだ。

少し出た浩吉のおなかにドンドン流し込まれる冷えたビール!

蓄えたひげにビールの泡が・・・拭いても拭いても白く付く・・・

そして2杯目を飲み干したその時。

あゆみが「パパ!そろそろ日本酒の時間でーす。〆張鶴(冷酒)をくださーい」

 

すると美智子が「調子に乗って!あゆみ!もう止めときなさい!

少し化粧しても未成年は未成年なんだから」

すると浩吉が「そんなかたいこと言うなよ!

アメリカは親が居ればアルコールOK何だから」

美智子が呆れて「ここは日本!しかも地元!噂にでもなったらどうするの!」

浩吉が負けじと「これからはグローバル社会なんだから何でも早いうちから

学ばせておかないと世界のスピードについて行けないよ」。

美智子が「家ならともかく外では“目立つ事”は止めて下さい!」と言ってるが

美智子(45才)は“真っ赤な口紅”に“ヘソ出しTシャツ”“赤い靴”!言ってる事と矛盾する・・・

浩吉とあゆみは心の底から思うのであった。でもそれが似合う美智子のビジュアルに改めて

感心する二人でもあった。

そして、浩吉がほろ酔い気分の中、話題は来年度から一人暮らしをする

あゆみの東京(青山国際メーテル学院大学外国語科)でのお部屋探しを、

いつから行くかを浩吉の出張スケジュールに合わせて検討を始めた。それに年の離れた腹違いの兄(東京在住)とも会う予定を組み込むことにした。一応お盆休み明けに予定を立てることにした。

お酒も寿司も結構頂いた後の〆に彼らは稲庭うどんを選択。三人とも食事を満喫した様子で

店を後にしたのであった。

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