
第三章 時空を超えて③
「あゆみはん!良い夢見てまっか~」いつもの時間帯より遅い時間の登場にあゆみはすっかり寝てしまっていた。
「あゆみは~ん!」とアノヨンの大きめの声にあゆみが目を覚ました。
「いつもよりずいぶん遅いのね・・・」「わてかていろいろありまんがな。」とアノヨン。
「へぇ~豊臣家いや私以外の用事が、あるんやね!」とあゆみが少し強い口調で言い放つ。
「これはわてにとっても大事なプロジェクトなんや!ミスは許されないんや!
これでも色んなこと段取りしてまんのや!」とアノヨンには珍しく言い返してきた。
するとあゆみは、はたと気づいたように「ごめんなさい・・・私にはアノヨンが頼り・・・で次の指示は?」。
「そやな・・・まず細かいようだが国税用の現金が1億欠けたらアカンのや。浩一郎はんに連絡して次の金塊を換金して
補てんするよう連絡してな・・・面倒やけど一億欠けたら絶対アカン!国税甘く見たらアカンで!石田社長はんに
後2千万くらいは使い古しの万札容易してもらわなアカン!」とアノヨンが強い口調で言う。
「それと豊臣家にはめずらしくキッチリした浩一郎はんはわかってると思うけど
石田はんの換金依頼額が違うこと気づいてると思うが、言うたらアカンで。
石田はんはわかってやってるさかい石田はんには金まいてたほうがええんや!
特に石田はんみたいなタイプは気づいてて何も指摘せんほうがええんや!
浩一郎はんにくれぐれも伝えといてや。頼んだで!ほな次はあゆみはんの進路や!
あゆみはんもなんとなく感じてると思うけど・・・介護業界いや医療業界に興味持ったんちゃうか?
佐々木はんはすごい!あゆみはんも医者を目指してみたらええんちゃうか~?
あゆみはんだったら同じ現場にいるのに温度差がある医療業界と介護業界との
架け橋創れると思うんや・・・どうや?」とアノヨン。するとあゆみが目をつぶったままベッドを飛び起き
「そうよ!わたしはやる!佐々木さんみたいに成ってみせる!
アノヨン!18年間で初めてしっかりした目標が見えた気がする!わたしはやる!やってみせる!」と
今までたんたんと何不自由無く生きてきた・・・なんとなく大学・・・なんとなく海外。はっきり見えた目標!
夜中にあゆみは“武者ぶるい”をしていた!「で・・・アノヨンどうしたらいいの?」とあゆみ。
「筑豊大学の医学部を目指すんや!~でも裏口入学はアカンで!実力でがんばるんや!
ま・あゆみはんの今の“オツム”では合格はありえへんからな~がんばって1年浪人して
来年の合格目指すんや!勉強はキツイで~佐々木はんに頼むんや!
朝から晩まで佐々木はんにくっついて離れるな!佐々木はんと居れば
鬼に金棒”合格”も”リハビリ技術”もなんと
”浩吉はんの介護”も出来て1石3鳥!笑いが止まりまへんな!佐々木はんには、ちと迷惑な事やけどな!」とアノヨン。
「がんばる!そうよ!私は介護業界いや医療業界の星に成ってみせる!」するとアノヨンが
「浩一郎はんに忘れないように伝えてな・・・ほな明日も来るで~随時換金を急ぐようにゆうといてな~」
そしていつものように気配が無くなっていた。
あゆみは何かの呪縛から解放されたかのように清々しかった。
わずか1ヶ月あまりで生活が激変し暗闇だった豊臣家・・・そしてあゆみの人生・・・
しかし新たな目標を見つけたそんな夜であった・・・。
あゆみは一刻も早く母・美智子にその決意を伝えたかったのである・・・。