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第四章 ​未来に向けて④

あゆみの卒業式の日!晴れわたる空!心地よい春の風!あゆみは豊臣家に降りかかった

不幸を悔やむことなくむしろ清々しかった。何か悪い呪縛から解放されて新たな人生の始まりを感じていた。

卒業式が始まる前。生徒の後ろ側がざわついていた。美智子である。派手な着物姿。浩吉が倒れ、

国税に入られたのに、さすが切り替えが早い。ロングの髪をアップにして、

エメラルドの帯留めに、ブリリアントカットのピンクダイヤモンドの指輪。

主役の卒業生以上に目立ち浮いていた。そんな中、式典は卒業証書授与

“仰げば尊し”“校歌“など淡々と進む。そして、卒業生退場。

あゆみは明美と春美と共に明智の元へ「明智君!東大医学部合格おめでとう!

私も来年地元の筑豊大学医学部目指すわ!」とあゆみ。「東京は?外交官は?」と明智。

「父が倒れて・・・志が大きく変わったの・・・私も明智君の後を追うわ!」としっかりとした口調で言い放った。

そこに佐江内が「あゆみさん・・・そ・卒業おめでとう!実は僕、筑豊大学医学部に合格したんだ・・・」。

「佐江内君!おめでとう!医者を目指してたなんて、初めて聞いた!とにかく1年後には必ず合格しまーす。

先輩宜しく!」とあゆみ。「明智君の話題の時話したはずだけどやっぱ影うすいのかな・・・」とボソっと佐江内。

「いっその事将来みんなで病院建てちゃう?」と春美。「そうですね。できたら嬉しいな・・・」と明美。

「卒業は始まり!わたしはみんなの後を追うけど必ず追いつくわよ~さあ~みんな手を出して~ファイト~」とあゆみ。

  「あゆちゃん!パパのとこに行くわよ~」と美智子。卒業式が終わって改めて見ても芸能人並みに輝いている、

いや、やはり浮いている。あゆみはみんなと挨拶を終え真っ赤な美智子の愛車クーパーに乗り込む。

あゆみは病室の扉を開けるなり「パパ~卒業したよ!これから新たな人生のスタートラインに立つわ!

パパもがんばって!」。浩吉はリハビリの真っ最中だった。肩にはしっかりとしたハーネス、腰にもしっかりと装具

らしき物が、身体は小型クレーン車の様な物で釣り上げられ浩吉の目からは涙がこぼれていた・・・。

「しっかり立って下さい!立てます!しっかり!」といつも穏やかな佐々木が鬼のような口調である。

「リハビリは本人のやる気が1番重要なんです!苦しくて悔しくても負けない強い気持ちが明日に繫がるんです!

私のリハビリはとにかく立位!しっかり立てるようになることが基本だと思ってます!麻痺状態が長く続くと拘縮して

しまいます!そうなる前に闘うんです!マッサージみたいななまっちょろいやり方じぁらちがあかない!

浩吉には辛すぎる・・・忍耐と努力とはほど遠い人生を送ってきたからである・・・。

私達はリハビリの意味そのもの社会復帰させるために携わっているのですから!」と言い放つ。

「そうよ!パパ!佐々木さんの言う通りよ!生半可な気持ちじゃ社会復帰出来ないと思う!

パパも私もこれから闘いよ!あゆもがんばるからパパもがんばって!」すると「わかった・わかった・・・」と浩吉。

「明日には言語聴覚士の武田も到着します。これでリハビリ体制も盤石です!後は豊臣様の強い気持ちがあれば必ず

1年後には社会復帰できます!」と佐々木は少し興奮気味に言い切ったのである。

するとあゆみが「わたし、佐々木さんたちのチームの名前考えたのドクターPOSTはどう?

理学療法士はPT、作業療法士はOT、言語聴覚士はST、そして医者だからドクターPOSTはいかが?」。

すると佐々木が「良いかも!それいい!みんなに報告して採用したいな!」

佐々木は年中休み無く働いていてチームに名前を付けるゆとりもなかった。

 「ドクターPOST(ポスト)か」と佐々木。それぞれが新たな人生の挑戦が始まったのである。

その日の夜。いつものようにあゆみの寝室にアノヨンが現れ「あゆみはん~これからが豊臣家の本当の闘いやで!

気~ぬいたらアカンで~やることは山積みやで~ほな明日来るさかい今日はゆっくり休みなはれ~」。とあゆみが

「アノヨンのおかげで少しずつ前進出来そう!これからもよろしく!」

そしていつものようにアノヨンの気配が消えていた・・・。

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